国有林は、日本における森林の約3割を占める国民共通の財産です。水源の涵養や災害防止など私たちの生活に欠かせない役割を担っています。
本記事では、国有林の定義や役割から、民有林・保安林との違い、管理方法、北海道の国有林事情まで、山林に関心をお持ちの方に向けて分かりやすく解説します。
山林売買を検討されている方にとって、国有林に関する基礎知識は必要不可欠な材料となるでしょう。
国有林とは?定義と役割
国有林は、国が所有・管理する森林であり、日本の国土の約2割(森林全体の約3割)を占める貴重な自然資源です。
国民共通の財産は、主に奥地山地や水源地域に分布し、私たちの暮らしを支える多様な公益的機能を果たしています。
国有林と民有林の違い
国有林は主に国土保全や生態系保全など公益的な役割が重視されるのに対し、民有林は木材生産や地域社会への貢献など多様な目的で管理されています。
国有林と民有林の違いについては下記の表の通りです。
項目 | 国有林 | 民有林 |
---|---|---|
所有者 | 国(林野庁など国の機関) | 都道府県・市町村(公有林)、個人・企業(私有林) |
面積割合 | 森林全体の約3割、国土の約2割 | 森林全体の約7割 |
分布 | 奥地の山地や水源地域など | 全国各地 |
役割 | 公益的機能の発揮 (国土保全・生態系保全等) | 木材生産、地域社会への貢献など |
管理主体 | 林野庁(国有林野事業) | 各自治体、個人、企業 |
国有林と保安林の違い
「所有者が国」である国有林に対して、保安林は「公益目的のために指定された森林」です。所有者は国に限らず地方自治体や個人・企業も含まれます。
国有林と保安林の違いについては下記の表の通りです。
項目 | 国有林 | 保安林 |
---|---|---|
所有者 | 国(林野庁など国の機関) | 水源涵養や災害防止など特定の公益目的で指定された森林 |
面積割合 | 森林全体の約3割、国土の約2割 | 国・地方自治体・個人・企業など |
分布 | 奥地の山地や水源地域など | 森林法に基づき農林水産大臣または知事が指定 |
役割 | 公益的機能の発揮 (国土保全・生態系保全等) | 水源涵養、土砂災害防止、生活環境保全など |
管理主体 | 林野庁(国有林野事業) | 土地所有者と農林水産大臣、都道府県知事など |
国有林の中にも保安林に指定されている区域があり、保安林の約5割が国有林です。ここで紹介した保安林についてより詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
国有林の管理は誰がどのようにしている?
国有林の管理運営は、農林水産省の外局である林野庁が管理経営を行っています。林野庁は全国7つの森林管理局と98の森林管理署等を設置し、地域の実情に合わせた管理をしているのが特徴です。
管理の基本方針は「公益的機能重視」へと転換され、国土保全や生物多様性保全、地球温暖化防止など、国民全体の利益となる多様な機能の発揮を目指しています。
国有林は売買できる?国有林で禁止されていること
国有林は「国民共通の貴重な財産」として位置づけられているため、原則として自由に売買することはできません。
国有林は国土保全や環境保全という公益的機能を担っており、その役割を維持するために厳格な管理下に置かれているのが理由です。
例外的に国有林の一部が不要となった場合(苗畑や貯木場など)、公用・公共用途を優先し、地方公共団体や公共団体からの要望がない場合に限り、一般競争入札による売却が行われることもあります。
これらは林野庁の公式サイトで売り払い情報として公開されていますが、極めて限定的なケースです。
参照:林野庁の売り払い情報はこちらから
また、国有林内では森林法などに基づき原則として以下が禁止されています。
- 立木の無断伐採や損傷
- 登山道や道路の新設などの開発行為
- 土石や樹根の採掘
- 開墾
- 土地の形質変更
- 下草・落葉・落枝の採取
- 家畜の放牧など
これらの行為を無断で行った場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金など厳しい罰則が科されることを覚えておきましょう。
北海道の国有林の割合
北海道の森林面積は約554万ヘクタールあり、そのうち国有林は約304万ヘクタールを占めています。
北海道全体の森林面積の約55%に相当し、全国平均の約3割と比較すると非常に高い比率です。北海道の国有林は大雪山や日高山脈などの広大な山岳地帯を中心に分布し、全道179市町村のうち150市町村に存在しています。
北海道は日本国内でも特に国有林の割合が高く、国土保全や水源涵養、生態系保全など多様な公益的機能を担っているといえるでしょう。
まとめ
日本の森林の約3割を占める国有林は、国土保全や水源涵養など国民生活に不可欠な役割を担う国の財産です。
民有林が木材生産等多様な目的を持つ一方、国有林は公益的機能重視で管理され、原則売買はできません。
北海道では森林面積の約55%と国有林の割合が全国平均より高く、広大な自然環境を保全しています。
国有林に関する基礎知識として今回の記事をぜひ参考にしてください。