保安林とは?普通山林との違い、所有するメリットまで詳しく解説!

保安林とは?普通山林との違い、所有するメリットまで詳しく解説!

近年、自然災害の激化や環境問題への関心の高まりから、保安林の重要性がますます注目されています。

しかし、「保安林ってどんなもの?」「普通の山林と何が違うの?」など、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、北海道の山林事情に詳しい山の専門家「ハピネスウッドバンク」が、保安林にまつわる情報を、普通山林との違いから、所有するメリット・デメリットまでわかりやすく解説します。

保安林とは?普通山林との違い

保安林とは、水源の涵養、土砂災害の防止、生活環境の保全など、公益目的を達成するために指定された森林です。

森林法に基づき、農林水産大臣または都道府県知事によって指定されます。

保安林は、日本の国土面積の約3割、森林面積の約5割を占め、私たちの生活に不可欠な役割を果たしています。

一方、普通山林(普通林)は、保安林のような法令による制限がない山林全般をさす言葉です。

なかには、地目が「山林」であっても変更手続きが忘れられているだけで、実際は保安林に指定されていたというケースも存在します。

保安林に指定されているか確かめる方法

自分が所有する、あるいは相続予定の山林が保安林に指定されているかどうかは、各自治体に所属する林業事務所にて書面で照会を依頼しましょう。

保安林は地番ごとに指定され、不動産登記簿の地目が「保安林」として登記されます。 不動産登記簿は法務局で確認することができますが、地番の一部分のみが保安林に指定されている等の場合には、地目が「山林」等のままになっていることもあります。

保安林の種類

保安林は、その機能によって以下の17種類に分類されています。

1.水源かん養保安林流域保全上重要な地域にある森林の河川への流量調節機能を高度に保ち、洪水を緩和したり、各種用水を確保したりします。
2.土砂流出防備保安林下流に重要な保全対象がある地域で土砂流出の著しい地域や崩壊、流出のおそれがある区域において、林木及び地表植生その他の地被物の直接間接の作用によって、林地の表面侵食及び崩壊による土砂の流出を防止します。
3.土砂崩壊防備保安林崩落土砂による被害を受けやすい道路、鉄道その他の公共施設等の上方において、主として林木の根系の緊縛その他の物理的作用によって林地の崩壊の発生を防止します。
4.飛砂防備保安林海岸の砂地を森林で被覆することにより飛砂の発生を防止し、飛砂が海岸から内陸に進入するのを遮断防止することにより、内陸部における土地の高度利用、住民の生活環境の保護を図ります。
5.防風保安林林冠をもって障壁を形成して風の力を枝葉と幹で分散することでそのエネルギーを弱め、風速を緩和して風害を防止します。
6.水害防備保安林河川の洪水時における氾濫に当たって、主として樹幹による水制作用及びろ過作用並びに樹根による侵食防止作用によって水害の防止・軽減をはかります。
7.潮害防備保安林津波又は高潮に際して、主として林木の樹幹によって波のエネルギーを弱めて被害を防ぐほか、林冠によって強風による空気中の海水微粒子を捕捉して塩害を防止します。
8.干害防備保安林洪水を緩和し、又は各種用水を確保する森林の水源涵養機能により、局所的な用水源を保護します。
9.防雪保安林飛砂防備保安林や防風保安林と同様の機能によって吹雪(気象用語では「飛雪」といいます。)を防止します。
10.防霧保安林森林によって空気の乱流を発生させて霧の移動を阻止したり、霧粒を捕捉したりすることで霧の害を防止します。
11.なだれ防止保安林森林によって雪庇の発生や雪が滑り出すのを防いだり、雪の滑りの勢いを弱めたり、方向を変えたりすること等により雪崩を防止します。
12.落石防止保安林林木の根系によって岩石を緊結固定して崩壊、転落を防止したり、転落する石塊を山腹で阻止したりすることで、落石による危険を防止します。
13.防火保安林耐火樹又は防火樹からなる防火樹帯により火炎に対して障壁を作り、火災の延焼を防止します。
14.魚つき保安林水面に対する森林の陰影の投影、魚類等に対する養分の供給、水質汚濁の防止等の作用により魚類の生息と繁殖を助けます。
15.航行目標保安林海岸又は湖岸の付近にある森林で地理的目標に好適なものを、主として付近を航行する漁船等の目標とすることで、航行の安全を図ります。
16.保健保安林森林の持つレクリエーション等の保健、休養の場としての機能や、局所的な気象条件の緩和機能、じん埃、ばい煙等のろ過機能を発揮することにより、公衆の保健、衛生に貢献します。
17.風致保安林名所や旧跡等の趣のある景色が森林によって価値づけられている場合に、これを保存します。

出典:林野庁 保安林の種類別の指定目的

保安林の管理は誰が行う?

保安林の管理は、通常の財産と同じように、土地所有者が管理することとされています。

ただし、農林水産大臣や都道府県知事は、保安林が常にその指定の目的に即して機能することを確保するように努めることと定められています。そのため、必要に応じて治山事業等が行われる場合もあります。

保安林の税金

保安林に指定された山林は税金が優遇され、固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税(現在は課税停止)は課税されません

通常、固定資産税の税額は、課税標準額 × 税率(1.4%)で算出され、固定資産課税台帳の所有者が市町村に納めますが、保安林に指定されると、固定資産税の納付が免除されます。

また、不動産取得税に関しても、住宅や山林などの不動産を購入すると、数カ月後に不動産取得税の納付通知が届きますが、保安林に指定されている場合は免除されます。

また、相続税、贈与税は伐採制限の内容に応じて相続税等の評価の際に、3割~8割が控除されます。

保安林を所有するメリット:優遇措置が受けられる

保安林を所有する、または所有している山林が保安林として指定されると、以下の優遇措置を受けることができます。

伐採の制限に伴う損失補償

禁伐や択伐など、立木の伐採に厳しい制限が課せられている保安林には、立木資産に対する損失の補償が受けられます。

税金の免除・控除が適用になる

固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税が免除されます。また、相続税・贈与税は保安林に定められている伐採の制限に応じて、3割〜8割が控除されます。

特別の融資が受けられる

一定の条件を満たしている場合には、伐採が制限される立木の維持に必要な資金を長期で低利の資金を(株)日本政策金融公庫から借りることができます。

必要に応じて治山事業による整備が行われる

山崩れの防止など公益上重要な働きをしている保安林については、必要に応じて全額公費負担による治山事業で森林の整備等ができます。

保安林を所有するデメリット:行為制限がかかる

​​保安林に指定されると「指定施業要件」に定められた、以下の行為制限が発生します。

  • 立木の伐採
  • 土地の形質変更
  • 伐採後の植栽義務

これらの制限は、保安林の持つ重要な機能を維持するために必要不可欠なものであり、違反した場合は森林法に基づく処罰の対象となります。

立木の伐採

立木の伐採には、都道府県知事の許可または届出が必要です。伐採の方法や伐採限度は、指定施業要件によって定められています。

さらに、面積あたりの伐採上限は、保安林ごとに設定されており、その範囲内であれば伐採することが可能です。

また、皆伐、択伐、間伐のいずれの場合も、許可または届出が必要であり、標準伐期齢に満たない立木は、伐採することが禁止されています。

土地の形質の変更

保安林の機能を維持するために、土地の形質の変更が制限されています。具体的には、以下の行為が制限され、それぞれの行為を行う場合は、許可が必要となります。

  • 土地の開墾や整地
  • 掘削などの形状変更
  • 家畜の放牧
  • 立木の損傷

伐採後の植栽義務

指定施業要件に「植栽」が指定されている保安林では、伐採後の跡地に植栽する義務があります。

保安林は、土砂災害の防止、水源の涵養、野生生物の保護など、様々な重要な機能を担っています。これらの機能を維持するためにも、保安林における制限事項を遵守することが不可欠です。

まとめ

保安林は、森林法に基づき、農林水産大臣または都道府県知事によって指定された、災害防止や生活環境の保全など、公益目的を達成するための大切な森林です。

保安林の所有には、税金の免除や控除が受けられるなどの優遇措置がある一方、普通山林とは異なる行為制限など規制も設けられているため、保安林の利用や用途には十分注意が必要です。

保安林の売買に関する情報は、以下の記事で詳しく解説しているので、今回の記事と合わせてぜひご確認ください。

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