皆伐とは?間伐との違いから再造林の現状と課題について解説

森林や林業について調べていると、「皆伐」と初めて耳にする方もいるのではないでしょうか。

皆伐は森林を構成する樹木を一定の区域内で一度に全て伐採する林業手法です。

本記事では、皆伐の基本的な定義から間伐との違い、メリット・デメリット、そして現在の再造林における現状と課題まで詳しく解説します。

皆伐とは

皆伐は、森林を構成する樹木を一定の区域内で一度に全て伐採する林業手法です。この手法は木材生産を目的とした人工林経営において、効率的な収穫と経済性を実現するために採用されています。

皆伐が行われる主な理由は、まとまった木材収益を得られる点と作業効率の高さです。収穫目標年数に達した人工林では、対象区域の樹木を一斉に伐採し、その後新たに苗木を植える再造林を行うサイクルが一般的です。

たとえば、スギやヒノキなどの針葉樹人工林では、植林から50年程度経過した段階で皆伐を実施し、木材として出荷します。伐採後は荒地となった土地に再び苗木を植え、次の収穫サイクルに向けた森林づくりを始めます。

皆伐は林業経営における木材生産手法として、日本の森林資源活用において欠かせない役割を担っています。

皆伐と間伐の違い

伐採範囲と森林管理の目的において皆伐と間伐は、異なる林業手法です。両者の違いを理解することは、適切な森林経営を行う上で重要なので以下の表にまとめました。

特徴皆伐間伐
伐採範囲すべての樹木一部の樹木
主な目的木材の効率的な収穫残った木の成長促進
環境への影響生態系に大きな影響あり自然環境に配慮しやすい

上記の違いが生まれる理由は、木材生産の効率性を重視するか、森林の持続的な健全性を重視するかという経営方針の差にあります。皆伐は短期間での収益確保を目指し、間伐は長期的な森林の価値向上を図る手法です。

皆伐と間伐は、それぞれ異なる森林経営戦略に基づいた管理手法として、日本の林業において使い分けられていることを理解しておきましょう。

以下の記事では、間伐を詳しく解説してますので参考にしてみてください。

皆伐のメリット・デメリット

皆伐は木材生産における効率性と経済性を実現する一方で、環境や生態系への影響も伴います。適切な森林経営を行うためには、ここで紹介するメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。

皆伐のメリット

皆伐は木材生産効率と経済性において優れた林業手法です。皆伐が林業経営で重視される理由は、短期間での大量収穫と合理的な作業体系を両立できる点です。

皆伐のメリットとして、以下の点があります。

  • 一度に多くの木材を収穫でき、生産効率も高い
  • 伐採や搬出作業が合理的で経済的負担を軽減できる
  • 同樹齢の苗木を一斉植林でき、管理サイクルが明確になる
  • 老朽化した樹木や病害木をまとめて除去でき、新たな生息地創出で生態系多様性が向上する場合もある

皆伐はこれらのメリットにより、林業経営の収益性向上と効率的な森林資源活用において重要な役割を果たしています。

皆伐のデメリット

皆伐は、メリットがある一方でデメリットもある林業手法です。全樹木の一斉除去により自然環境が急激に変化し、森林が持つ多様な生態機能が同時に失われます。

皆伐によるデメリットを以下にまとめました。

  • 伐採跡地が裸地となり土壌流出や土砂災害のリスクが高まる
  • 生態系が大幅に乱れ生物多様性が一時的に失われる
  • 若い樹木も含む全伐採により二酸化炭素吸収量が大幅に減少し地球温暖化進行に影響する
  • 苗木成長まで時間を要するため環境回復が大幅に遅れる

これらのデメリットに対しては、適切な再造林の実施と群状皆伐などの段階的伐採手法が必要です。

環境負荷を最小限に抑えるためには、正しい知識で対策しないといけないことを理解しておきましょう。

皆伐・再造林の現状と課題

日本の皆伐・再造林は伐採面積と再造林面積の乖離という問題を抱えています。乖離問題が発生している理由は、植林の初期コストの高さと林業従事者の減少により、経済的・人的な制約が生じているためです。

たとえば毎年約9万haの森林が皆伐される一方で、再造林が実施される面積は約3万haにとどまり、再造林率は30~40%という低水準で推移しています。

地拵え作業や苗木の植え付け、下刈りなどの初期費用負担と森林所有者の経営意欲低下により、伐採跡地が放置されるケースが増加し、土壌流出リスクの高まりや二酸化炭素吸収能力の低下も招いています。

持続可能な森林経営実現には、単層林から育成複層林への転換推進やJ-クレジット制度活用による新たな価値創出が不可欠です。

参考:J-クレジット制度

まとめ

皆伐とは森林の樹木を一定区域内で一度に全て伐採する林業手法であり、間伐との違いは伐採範囲と目的にあります。

皆伐は効率的な木材生産と経済性というメリットがある一方で、環境破壊や生態系への悪影響といったデメリットも存在します。

現在日本は皆伐後の再造林率が30~40%にとどまる深刻な状況にあり、持続可能な森林経営の実現には再造林の推進が必要です。

環境への配慮と経済性のバランスを考慮した上で、長期的視点で考えた森林資源の活用を検討することが持続可能な林業発展への鍵となるでしょう。

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